焼酎談話 焼酎文字の最古の記録は1559年(永禄2年8月11日)の日付けが記載された棟木札が鹿児島県大口市の八幡神社で発見されている。 1546年にポルトガル船の船長が、鹿児島の山川でオーロカ(蒸留酒)が飲まれていると書いた記録はある。 日本の酒税法は焼酎を甲・乙に分類し、甲類は農産物から造った純粋アルコールを36度未満に水で薄めたもので規定に「農産物から造った純粋アルコール」と定めているのは、食用に使ってはならない石油から造る合成アルコールが生産されているからである。 現在甲類焼酎のアルコール原料の主な物は廃糖蜜で、他にキャツサバ等が使われ、これを原料に連続式蒸留器「パテントスチル」で純粋アルコールを得てこれに和水した希釈アルコールが甲類焼酎。(ホワイトリカー) 穀類、芋類に麹を使って糖化させ、アルコール発酵させたものを単式蒸留器「ポットスチル」にて蒸留し45度以下に和水したものを乙類焼酎と分類している。 乙類は単式蒸留のために其の原料の風味や香りが残り、特に薩摩イモで造った鹿児島の芋焼酎は熱燗をする事で、甘味や香りがあると賞賛されている。 熊本の球磨焼酎は米から造り、沖縄の泡盛は米麹をもろみとして蒸留し造られている、鹿児島でも米焼酎も造られている。 特例として奄美、大島地方では黒糖を使って造る事が認められている。北海道の根室半島の清里町では、ジャガイモ焼酎が造られている。 乙類の本格焼酎は各地各様にそれぞれ風土にかなった飲み方をしている。 鹿児島では25度のイモ焼酎を6対4の割合で水割りして、これを黒ジョカ等で沸かして「熱燗」にしたり、お湯割りして呑み、球磨焼酎は水割りせずにお燗して呑まれている。 最近そば、むぎ、きび、あわ、等が呑まれているが、そばだけで造ったら呑めた物ではない。 原料に36%以上そばを使ったら、そば焼酎の表示をして良い事になっている。 勿論その他の原料でも同じである、これらは総て米、麦をブレンドしてもろみを造り蒸留している。 本格焼酎(乙類)は原料の風味や香りをたしなめられ、そして悪酔いや二日酔いの無い焼酎である。 悪酔い、二日酔いの原因はメチールアルコールとアルデヒドで、アルデヒドはアルコールが人体内で分解する際に発生するもので、いずれの酒類でも大差はない。 暴飲すれば悪酔い、二日酔いするのはそのせいである。 鍵はメチールアルコールにあり、暴飲しなくても悪酔い、二日酔いするのは一種のメチール中毒症状なのである。 乙類焼酎はこのメチールアルコール含有量が極めて少ない。 本省で食品中メチールアルコールの許容量は1oリットル当り1oグラムと規定されている。 ◇乙類焼酎 0.01 ミリグラム ◇ウイスキー 0.15ミリグラム(乙類の15倍) ◇ワ イ ン 0.25ミリグラム(乙類の25倍) 乙類焼酎はアルコール添加をせずに、更に葡萄糖やグルタミン酸ソーダー等の化学調味料、合成着色料、合成香料も添加しない。まさしく嘘をつかない自然食品だ。 乙類焼酎を毎日1合呑むと血管内皮細胞からウロキナーゼ(血栓溶解酵素)の分泌が促される、そして血管の掃除をしてくれ、脳血栓の予防に良いと、かって宮崎大学の研究グループが発表している。 果実酒・薬草酒・その他焼酎漬けを造る時に、使用する焼酎は果実の写真や、果実の絵が印刷されて35度の甲類焼酎がいかにも果実専用酒のように、酒屋の店頭に並べられ販売されている。 しかし焼酎には乙類もあり、35度の米製・イモ製があり各々特徴がある。 3種類の梅酒をつくるために同じ分量の氷砂糖と青梅、次の3異種類の焼酎を使って梅酒を漬けた。 焼酎甲類35度(ホワイトリカー) 焼酎乙類35度(原料 米) 焼酎乙類35度(原料 いも) 1.8リットルの焼酎を夫々入れて漬け込み、約一年経過してから熟成した梅酒を小売酒販組合の幹部に試飲して頂いた。 結果は乙類35度米製の焼酎で漬けた梅酒が圧倒的に好評であった。 乙類35度イモ焼酎で漬けた梅酒も、まあまあでしたが、甲類35度ホワイトリカーで漬けた梅酒は不人気だった。 乙類35度米製の焼酎で造った梅酒は、優れた浸透圧で梅のエキスが良く抽出され、こくもある旨い梅酒ができ、漬ける焼酎の種類で、格段の差があることを実証できた。 この乙類35度米製の優れた浸透圧について後日醸造試験場の専門家にその作用の分析等を依頼したが、明確な回答を得ることはできなかった。 最近では真の焼酎鑑定、味見の判らない人達が銘柄に惑わされて高価な値段の焼酎を買い求めて呑んでいるナンセンスな状態に呆れるばかりである。
(1.8g) 昭和23年は異常なインフレーだった
住吉 重太郎 |